『支那経済制覇を完成しつゝある国際猶太財閥の活躍』犬塚惟重 著(昭和12)

お断り

本篇は日本外交協会第百九十二回例会において軍令部第三部海軍大佐犬塚惟重氏が試みられた講演の要旨を本協会幹事において筆録したものであるが講演者の査閲を経て少数部複写し会員各位の資料として頒布するものである

昭和十二年七月

日本外交協会調査局

支那経済制覇を完成しつつある国際ユダヤ財閥の活躍

軍令部第三部海軍大佐 犬塚惟重氏 述

序説

一、講和お引き受けの動機と目的

江戸の下世話に「おだてとモッコに乗るものではない」というのがありますが、私はおだてに乗るほど心臓が強くはないのですが、当協会幹部の外交手腕に辞退の術を失ったのと、かつ始終お話を聴かせていただいているので、そのお礼の意味であえて御清澄をわずらわす次第であります。
最近支那におけるこの方面の活動は、単にイギリスの活動として日本の新聞辺りに大分報道されているが、私に言わせれば、もう少し研究して突っ込んで書いたらよろしかろうと歯がゆい気がする。
さらに今一つ憂慮すべき事がある。すなわち最近外国製の宣伝が日本国内に有力に撤布され、その情報源はことごとく外国の通信社から来ているのであるが、忙しくて研究する暇のない国民の多数は、なにも知らずこういう電報を大きな活字で朝夕見せられると、結局「市に三虎」のたとえで、これらの事がいつの間にか頭の中に入ってしまうおそれが多分にある事である。内外の情報を見ていると、実際と新聞電報とを比べて日本はまだまだ研究する余地があるのを痛感する。これもこの人前に出た一つの理由であるが、しかしながら、そういうことを新聞にデカデカと書く人に罪があるのではなく、そういう人をこれであると判断させる所の従来の外国の準備的宣伝が日本に行き届いているのが不審なのである。すなわちあたかも培養基が完全な温度に保たれている所に黴菌が一匹飛び込めばたちまち繁殖すると同様な結果になるのであろうと思う。日本にいて最も感じることは、外国の宣伝に対する日本人の訓練がまだできていないことであって、その原因を探求すれば、目下世界に覇を唱えている通信機関についての立ち入った研究が、もちろんごく一部にはそういう事を既にご存じのお方もありはするが、日本の大部分の知識階級に普及していないためであろうと思う。外国の宣伝機関である大新聞及び大通信社はその背後において国際金融資本と世界的に敬称されるユダヤ財閥と直接間接に密接な関係があって、しかもこれが秘密結社的な色々な動きに関連があり、しかも大金力・大資本でやるために、日本の新聞にデカデカと書かれるのは結局そういうものの宣伝が入って来る。例えばイギリスなりフランスなりに行って反ユダヤ的な事を書いた本を出版しようとすれば直ちに解ることであるが、第一、出版会社で受け付けない。

 

 

(二)フランマソンの綱領及び運動方法

フランマソンは表面は共済団体あるいは慈善団体であって、これには大陸系と英国系とがあるが、大陸系の方は自由・平等・博愛を第一の標語として掲げており、英国系は慈善とか共済が表看板になっているがいずれも非常に多数の割合でユダヤ人が入っており、かつ、指導的立場に立っている事を研究者は力説している。特に例えばイギリスは皇室が頭領であって、フリーメーソン結社は公然種々の活動をやっており、その総会の際は皇帝の祝電を受ける。したがって米国その他英国殖民地には英国のフリーメーソンが非常に優勢である。(英国系は目立つような政治的運動は行わないと称している。)大陸系のものは非常に革命的な運動をフランス革命あたりから具体的にやっている訳である。それはスペインのフランコ将軍も言ったようにこれをもって自由民主主義を普及させ、まず革命の予備的思想工作をやろうというのである。フランス革命の始めも、その当時の上流社会はこれを一種の思想運動として非常にめずらしがっていた。自分らは別に生活に困らないから、人道的という美名をてらって自由平等とか博愛とかいう文句に基づく観念的遊戯をサロンで好んでやっていた訳であって(ちょうど日本でもインテリが共産主義に好意的であり中に引き入れられるのは、自由個人主義の礼賛者に多いのと同様である)、貴族などもだいぶんこれに引き入れられた。結局それらを利用して、ルイ十四世を断首台に送ったので、一方野心のある有力貴族オルレアン大公あたりを担いで、これも結社に入れてやった陰謀である。さらに外国の勢力をも利用し、フランスの制覇をそねむドイツのフレデリック大王の内命を受けた駐仏大使が連絡係を勤め、また米国殖民地のことでフランス人をにくんでいた英国のピットが、資金を大公に供給したというようなことでフランス革命が出来上がったと欧州の研究家が実証を挙げて説明している。彼らが天下を取り第共和国を造ってから、フランマソンはフランス国に大きな足場を得て、革命運動を非常に人道的な事業のように世界に宣伝していると称される訳である。フランマソンの世界的本部としては、イギリスのスコットランド系結社が英国系の本山であり、フランスのグラントリアンが大陸系の本山である。その他にフランスにグランド・ロッジ・ヅフランスというのがあって、これは国際的連絡の役目をして動くものである。アメリカは英国系が主であるがユダヤ人の勢力が強く、シカゴにブナイブリスというユダヤ人だけの非常に過激なフリーメーソン結社があって、これは民族擁護を第一目標とし、反ユダヤ運動があるとこの連中が真っ先になって叩きつけに行く事は幾多の実例が挙げられている。

 

犬塚惟重 著『支那経済制覇を完成しつゝある国際猶太財閥の活躍』,日本外交協会,昭和12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1462409